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アプリを使った建築作品の評価!?-建築審査イベントASHIBAのイベントレポート-

こんにちは!

今回の記事はいつもと毛色を変えて、10月6日に東京、新建築社青山ハウス(設計:乾久美子)にて開催されたイベント

ASHIBA  -デザイン評価の頭の中-

のレポート記事になります。

 

今までブラックボックスとなっていたデザイン評価。

設計課題やコンペの講評を聞きながら、

“正直いまいちピンとこない…”

“結局のところ、評価基準がなんなのかよく分からない”

と思ったことはありませんか?

 

今回のイベントはそんなデザイン評価に焦点を当てて、アプリを用いてデザイン評価の頭の中を丸裸にしてやろう!というかなり挑戦的&実験的なイベントでした…!

 

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概要

経緯

冒頭でも書きましたが、建築をやっていく中で受けた評価に対して”ピンとこない”、”その評価を鵜呑みにしていいのか判断が難しい”場面が多くあるかと思います。

そんな課題意識から、デザイン評価の可視化・定量化を目指す研究をされていたのが京都大学建築学科で助教をされている太田裕通先生です。

関連論文:

○太田裕通,塙洋介,北雄介:建築・都市デザインの評価におけるAHPを用いた個人による意思決定の可視化に関する手法的試み, 日本デザイン学会研究発表大会概要集Vol.62, C4-03, 2015.6.14

○太田裕通,林和希:AHPを用いた個人/集団による「デザイン評価」の可視・共有アプリの開発 -建築系卒業設計イベントにおけるβ版アプリの実験報告, Design シンポジウム2019, 2019.11

 

今回のイベントASHIBAは、太田先生とBEAVERを運営するArchiTech株式会社が協働で企画、開催したイベントになります。

 

目的

これまた冒頭で既に書いてしまいましたが(汗)、デザイン評価の頭の中を明らかにすること、これが本イベントの目的です。

アプリの活用を通じて「評価基準を言語化」し、「各基準の重要度を数値化」し、それに基づいて「作品評価を定量化する」ことで、

「審査員が交わす議論の中から評価基準を読み取らなければいけない」「投票制で0か1かの評価しか受けられない」従来の評価プロセスからの脱却を目指したものになります。

 

評価アプリ

イベントの肝心要となる評価アプリは一体どんなものなのでしょう?

アプリによる評価の流れを見ていきたいと思います。

 

Step1. 評価基準をツリー構造で表現

Step2. 各評価基準の重要度をそれぞれ比較(例えば、テーマ設定と空間性ではどちらが重要か、など)

Step3. Step1と2が終わると、評価者の評価基準が円グラフの形で出力(円グラフ上で角度が大きく表示されているものほど重要視される評価基準)

Step4. Step3で作成した評価基準を元に評価対象を比較。作品AとBを比較して、各評価基準ごとにどちらの作品がどの程度優れているかを入力。

Step5. 全ての評価対象の比較が完了すると、最後に評価結果がこのように出力される。

 

ちょっと複雑ですが、確かにこのアプリなら評価基準が可視化・定量化されそうな気がします!

 

イベントの流れ

イベントは3部構成となっていて、

第1部:事前に審査員の先生方に作成していただいた各自の評価ツリーおよびその重み付け結果の発表

第2部:評価対象作品のプレゼンテーションと、アプリを通じた評価

第3部:今度は審査員全員で議論しながら審査基準を1つの評価ツリーに再構築。その基準を元に各作品を再評価

という内容でした。

1・2部が審査員それぞれが自身の価値観に基づいて評価して、

3部が審査員全員で作成したオフィシャルな評価基準に基づいて評価する、

という感じですね!

 

イベントの様子

第1部 – 審査員それぞれの審査基準の発表

今回、審査員として来てくださったのは、

大西麻貴さん(o + h)

高木秀太さん(合同会社高木秀太事務所)

富永大毅さん(富永大毅建築都市計画事務所)

の3名です。

審査員それぞれの評価ツリーおよび重み付けを反映した円グラフはこんな感じでした!

解説いただいた際に印象的だったコメントも合わせて載せてみたので、そちらも必見です!!

 

大西麻貴さん

“理念と生き物らしさという評価が過半を占めているところを見ると、家に対する考えのある人をいいなって思うのだなっていうことが客観的にわかりますね。”

 

高木秀太さん

A(問い)/B(解法)/C(完成度)は僕がどの大学でも住宅課題に求めている点で、自分がロボットになったような気になって結構ドライにつけるようにしています。なんですけど今日のイベントで初めてD(システムとしての設計)という超個人的な興味をわざと入れました。

 

富永大毅さん

“基本的には案を評価しないで、その人の設計に対する能力みたいなものを案の中から汲みとれるものを評価するという方針にしてるんですね。”

 

 

審査員の方々の頭の中がこんな風に可視化された時点でイベント参加者の間ではどよめきが、、

普段こんなにあけっぴろげに基準が語られることがないだけに、かなり興味深い話を聞くことができました。

 

第2部 – 作品のプレゼンとアプリを用いた評価

今回のイベントで作品を出展してくださったのは下記4名の学生さん方。

・富士 輝さん / 首都大学東京3年生

湯川智咲さん / 日本大学2年生

・高山司希さん / 千葉大学2年生

・小林芽衣菜さん / 共立女子大学2年生

 

テーマは、”住宅“です。

出展作品の展示の様子

富士さんのプレゼンボード

湯川さんのプレゼンボード

高山さんのプレゼンボード

小林さんのプレゼンボード

 

各自が15分程度、質疑も交えながら自分の作品をプレゼンし、プレゼンが終わると審査員がタブレットを操作してすぐさま評価を行う、あまり他では見たことのない光景でした(笑)

そうして得られた評価結果がこちら。

大西麻貴さんの評価結果

 

高木秀太さんの評価結果

 

富永大毅さんの評価結果

 

下の4本の棒グラフが4人の発表者に対応しています。

従来は順位と簡単なコメントがついて終わり、ということが多かったかと思いますが、こうしてアプリによる評価結果を眺めてみると、

・どういう基準の評価が点数に最も結びついているか

・もっと作品を良くするためにはどの評価基準を意識したら良いのか(どこに改善の余地があるか)

など、多くのことが読み取れそうな感じがしますね!

 

第3部 – 審査員全員の共通評価基準の構築と評価

最後となるこの第3部では、第1部で審査員それぞれが発表した評価ツリーを元に、3人で一つの評価ツリーを作り上げていきます。

審査員同士の考えがぶつかり合い、白熱した議論が交わされる中出来上がったのがこちら。

最終的に成果物として出てくるプレゼンの部分より、その過程にある「問題提起」や「設計プロセス」に非常に重きを置いていることが分かりますね。

 

そしてこの基準を元に、再度4作品を評価し直します。

大西麻貴さんの評価結果

 

高木秀太さんの評価結果

 

富永大毅さんの評価結果

 

そしてこれらを合算して最優秀賞が決定!!

 

まとめ

今回のイベントは、普段なかなか言語化されない評価基準がアプリによって可視化され、各基準ごとに細かく評価結果が分析できるというなかなかに先進的かつ刺激的な取り組みでした!!

逆に、会場からの声として「かえって混乱する」「評価基準がオープンになることによって点数稼ぎのために設計を最適化できてしまうがそれは本末転倒なのでは」「もう少し簡略化しないとあまり実用的ではなさそう、、」などネガティブな意見も上がっていて、本当に”実験的”なイベントだったな、という印象でした。

 

このイベントが、建築評価の今後にどのような影響を与えていくことになるのかが非常に楽しみです!

それでは!!

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