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建築×ITのこれからを考えるvol.1 「ヴァナキュラー建築との対立と共存」

みなさんは、テクノロジーが急激に発展している現代において、建築物のデザインの未来についてどう考えていますか?

今はまだアヴァンギャルドな建築実践のように語られることが多いコンピュテーショナル・デザインなどのデザイン手法が、スタンダードになるような未来が来た時、過去に人間が培ってきた古典的・土着的なデザインの手法や思想はどうなっていくのでしょうか。

 

今回の記事では、そんな明確な答えのない問いについて、超個人的意見を述べながら、みなさんと一緒に考えて行きたいと思います。

ぜひ記事を読んで、みなさんの意見や質問をコメントに残してみてください!

 

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「ヴァナキュラー建築」

最初に、コンピュテーショナル・デザイン等のテクノロジーを建築設計に取り入れたものを「IT建築」と仮称し、vol.1である今回はそんな「IT建築」と対立するモノとして、安易ではありますが「ヴァナキュラー建築」を挙げて話をしていきましょう。

そもそもヴァナキュラーって?

「ヴァナキュラー」という言葉についてあまりなじみのない人がいるかもしれません。

「ヴァナキュラー」とは、日本語では「土着的」や「民族調」といった意味で、簡単に言えば国や地方ごとのかかわりの深いモノのこと。「ヴァナキュラー建築」とはそういった土着的思想やデザインに基づいてその地域の気候や立地、人々の活動といった風土に対応して造られる住居や施設などの建築を指します。

具体的にわかりやすいものを挙げれば、古いものでは古代マヤ文明のククルカン大神殿や、最近話題のものではインドネシアのバンブーハウス、日本では千本鳥居で有名な京都の伏見稲荷大社などがありますね。

ヴァナキュラー建築のデザイン

ではそういったヴァナキュラー建築は、いったいどのようにデザインされてきたのでしょうか。その多くは、土地ごとの「信仰」や「記憶」、「愛着」によって形成されてきました。

例えばインドネシアのバンブーハウスは、施工する竹大工が詳細な図面などは用いずに、過去の経験やそれぞれのイメージに基づいて建てられていることが多いです。日常的な竹の加工(家具や造船)によって得られた知恵を建築に応用し、「竹材」という個体差が生じやすい建材に柔軟に対応しながら、デザインされているわけです。

 

「IT建築」と「ヴァナキュラー建築」の対立

一転して、現代の既にあるIT建築の多くは、設計段階で担保できる合理性や経済原理が根底にあります。わかりやすい例でいえば、大手ゼネコンなどはBIMを用いて構造・環境性能などをシミュレーションし、実際の建物のデザインに結果を織り込むことで、設計案の検討効率化や、顧客への提案力の向上、建物のランニングコストの削減が図られています。

もともと飛行機や自動車など複雑な機能が組み合わさった製品を設計するためのモデリング手法であったコンピュテーショナル・デザインが、技術の発達により汎用性を増した結果、建築の分野にも取り入れられたわけです。

そうした経緯から、人間が培ってきたデザインプロセスであるヴァナキュラー建築と比較すると、上記の意味でははるかに合理的で、生産性に優れた建築物の創造が可能になるわけですが、ではこれからの世界ではヴァナキュラー建築はどんどん淘汰されていくのでしょうか。

 

現在の建築から、「画一化」の危惧

ここで過去を振り返ると、人間社会において文化や技術は異なるもの同士で対立し、片方が残り、もう片方が消滅することで最終的にはひとつにまとまるものがほとんどでした。文化人類学やオリエンタリズムなどの一部には異なるもの同士でも争うことなく共存していく道を模索しようとする姿勢もあることも事実ですが、それでもどちらかを選択しなければならなくなれば比較し優劣を競い、より優れた方を、「合理的」で「生産的」なものを人は選択してしまいます。

 

世界のすみずみまで資本主義が席巻し、あらゆる国と地域の政治体制が民主主義に塗り替えられている現代では、「効率を重視し、多数派の意見が採用される」という性質上、このままではこれから建築物が設計される際に選択されるものはおのずと同じようなものに収束されていくのではないでしょうか。

 

しかもそうした建築物の画一化は、日本では過去にも起こっていました。19世紀半ばに日本は欧米諸国からの遅れを取り戻すため西洋化を急ぎ、西洋の価値観を導入した結果、当時の「建築」においてその方向性は日本も欧米も大差のないものになってしまいました。所謂、「擬洋風建築」と呼ばれる類のものが大量に建てられ、日本古来のヴァナキュラー建築が多く淘汰されてしまったのです。結果、現代においてもその流れはいまだに残っており、みなさんも住宅街や街中で「なんちゃって洋風」のような住宅やビルを見たことがあると思います。

そういった建物に比べ、「合理性」が加わったものに画一化していく分、現代の流れはまだマシであるといえるかもしれませんが、このままではある程度技術が進んだ国では言語のような普遍的なもの以外、国ごとの個性がなくなってしまいます。

それは果たして豊かな世界といえるのでしょうか。

 

これからの建築業界に求められること

ここまで少し大げさに書いてしまったかもしれませんが、昨今のテクノロジーの目覚しい進歩はこうした危険性をはらんでいることも事実です。

これからの建築を作っていく私たちには、テクノロジーを有効に用いながら安易に同じような選択をせず、画一化から脱却していくことが求められているのではないでしょうか。

そして本来テクノロジーは、建築を画一化させるのではなくむしろ多様化させることの方が親和性が高いとも考えます。

コンピューテーショナルの中でも人工知能にまで思考を巡らせると、人工知能はもともと自然や生物が持つ知能を模倣することで発展してきた過去があるからです。自然界の遺伝的アルゴリズムや、生物の知能の強化学習などが良い例ですね。

国や地域ごとに自然界のような多様性をもった建築物を、テクノロジーの力で創造することができれば、建築×IT×ヴァナキュラーのような共存も可能かもしれません。

 

まとめ

今回の記事は役立つソフトの使い方や最新技術の紹介ではありませんでしたし、文章ばかりで少し読みづらかったかもしれませんが、私たちが今後進んでいく建築業界の大きな命題となりうる内容のように思います。

今回は「IT建築」「ヴァナキュラー建築」の二項対立で記事を書きましたが、未来の建築業界を変えうるファクターはほかにもたくさんあります。vol.2以降では、「建築×IT」とそれらほかのファクターについて記事を書く予定です。冒頭でも書きましたが、記事についてのご意見、テーマについてのリクエスト等もお待ちしていますので、お気軽にコメントしてみてください。

 

それではまた!

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