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【模写ワーク】実際に手を動かして模写してみよう!設計課題に使えるアイデアの作り方

こんにちは。やまちゅう(@sosoyamachu)です。

 

皆さん、建築を勉強するとき

「模写」、していますか?

 

この記事では、建築設計を学び始めたばかりの学生に向けて、

「図面や写真を模写し、質の高いアイデアの引き出しを作る方法」について

ぼくが実際に模写を行いながら解説していきます。

 

この記事を読むことで、

「気になる建築物をどうやって分析したらいいのかわからない」

「建築の勉強はしているけど、アイデアが思いつかない」

という状態から、

 

「模写をする時に何を意識すればいいのかわかった!」

「アイデアの引き出しを作るために模写をする理由がわかった!」

となり、自分でも実践してみたくなるかもです。

 

 

 

 

 この記事では、僕が実際に模写をしながら、

「模写するときに意識すべき事」を解説していきます。

 

ぜひこの機会に、

自分だけのアイデアの引き出しを作る方法」を身に着けましょう!

 


 

 

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模写する建築物を選ぶ

さて、まずはこれから模写していく建築物を一つ選びましょう。

模写する建築物を選ぶ時の基準

この時、単純に、

「なんかすごい」、「カッコいい」、「見覚えがある」等でもOKですが、

出来るだけ、その建築物を選ぶ理由があった方がよいです。

 

目的意識がはっきりしているほど、

より細かくその建築物を分析することが出来ます。

 

例えば、

「次の課題は図書館の設計だから、気になった図書館を模写してみよう。」とか、

「最近あの建築家の本を読んだから、その人の設計した建築物を分析してみよう。」とか、

「今度直接見に行く予定が出来たから、模写をして予習しておこう。」などなど。

 

こういった意識を持ちながら模写する事で、

より細かく、より深く理解することが出来、

質の高いアイデアの引き出しを作れます。

 

また、ただパラパラと建築雑誌を眺める事よりも、

模写をするとなると時間がかかります。

そのため、「時間をかけても分析してみたい」と思える建築物を選ぶことが大事です。

 


模写する建築物の具体的な探し方

 


模写したい建築物を探す時は、

「住宅特集」「新建築」「a+u」「ディテール」など、

建築作品が沢山載っている雑誌から探すのがおすすめです。

 

最初のうちは、このような雑誌から気になる建築物を模写する事」をオススメします。

 

雑誌に載っている作品については、

「その建築物の直面していた問題」、「実現しようとしたプログラム」、

「解法」、そして「図面」が一通り揃い、多くの写真も掲載されています。

 

その建築物についてまとまった解説がされているため、

分析する上では非常に取り掛かりやすいです。

 

 

 

僕は今回、「住宅特集」から

「Overlap House」(設計:平田晃久)という住宅を模写していきます。

 

この作品を選んだ理由としては、

自分が最近考えていた、

「コロナ禍によって窮屈さが顕在化してきた都市部の住宅をどう改善すべきか」

という問題に対するヒントが得られるのではないかと直感したからです。

 

大胆かつ立体的な庭空間が建物の内側に入り込み、

植栽がしっかりと挿入されています。

その結果として面白い形にもなっている等、造形にも興味がわきました。

 

また、設計者である平田晃久さんの本を読んだこともあり、

平田さんの思想が、設計においてどう反映されているのか感じたいと思いました。

 


さて、ここからは僕が行っている模写の流れをまとめていきます。

 

今回は簡単に、3つのステップで解説します。

  1. 写真や図面を大まかに分析
  2. 説明文を読む
  3. 模写をする

 

皆さんもぜひ、

この記事を読みながら、

実際に手を動かしてみてください!

 

写真や図面を大まかに分析する

まずは、作品の説明文を読むよりも先に、

写真や図面を自分なりに分析してみましょう!

 

自分の眼で建築物を分析する練習が出来ます。

まずは主観的に気になった点や、設計者の意図を想像してみて、

その後に説明文を読むことで、答え合わせをするような感覚です。

 

説明文を先に読んでしまうと、

それに関連する事ばかり分析してしまったり、

自力で建築物を分析する眼を養いづらいと僕は思っています。

 

 

それでは、以下に

僕がパッと見て、気になった点を列挙してみます。

 

また、もし『新建築データ』のアカウントを登録していたら、

「Overlap House」と検索して、

ぜひ一緒に考えてみて下さい。

 

僕の気づきと比較することで、

「あ、そういう所を分析しているんだ」

「自分はこういう所にも気が付いた」

とより模写のコツが掴めて面白いかもです。

 

以下、僕が写真と図面を見て考えた事の列挙。

  • 大胆に外部空間を作っている割に、周辺道路との距離が近く、プライバシーをどう確保しているのかが気になる。
  • 植物の真上に建物の3階が覆いかぶさっているが、植物はどのように育っているのか?(そういう植生?あるいは光が入る工夫がある?)
  • 階ごとの水平耐力にかなり差があるように見える。ブレースも耐震壁も見当たらない。地震が起きたときどう耐える?
  • 柱結構細そう。100㎜くらいの鉄骨?
  • 柱が上下端で建物内に入るところ、補強はしてあるのかな?柱細いのにすごいモーメントがかかりそう。
  • 一階?の窓の位置的に半地下空間?周りの家と同じくらいの高さに合わせるため調整した?
  • このタイルの色のルールはなんだろう?周辺のイメージからとってきた?配置はランダム?
  • 一つ一つの建物の塊が小さいけど、どうやって断熱してる?
  • 鉄骨っぽいけど三角屋根にしているのはなぜ?(三角屋根でこのスケールの建物は木造が多い印象)
  • なぜ植物のある外部空間まで三角の起伏?歩きづらくない?
  • 外部空間の天井部分はデッキプレート?住宅にしては冷たい印象がある気がするがなぜ?
  • 二階三階にも木や土があるけど、どのくらいに床が厚くなってしまう?
  • 住宅にしては外観を気にしているようだが、何の狙いがある?周辺の環境は市街地?都心?
  • もし木が燃えたらどう避難する?
  • 夜景がかなりいいな。懐に誘い込むような形と、その中でデッキプレートや木を照らす光がかっこいい。
  • 光は一方向から木や建物を静かに美しく見せるというよりも、一種のラボのような雰囲気をしているな。なぜ?これも外観を意識する理由に関わる?
  • 植物の管理が大変な気がするが、だれがやる?
  • ハーフミラーで作られた門戸、か。外からの視線を気にしつつ、プライバシーを緩く守り、デザイン性の高さから街並みに貢献している意志を感じるな。
  • 木を沢山生やしてプライバシーを緩く守る、というのはよくあるが、これほど立体的に行っている住宅は珍しいかも。
  • 居住部同士のプライバシーは?どんなガラスを使っている?あるいは植栽も使って視線を遮っているのか。

 

と、こんな感じの点が気になりました。

 

自分が分析しているだけで

「これはこういう意図があるんだろうな」と確信したものもあれば、

「ここ何故こうなっている???」と一層興味が強くなった点もありました。

 

こうして気になる点を列挙した上で、

今度は設計者による説明文を読み、

答え合わせをしていきます。

 

説明文を読む

次に、説明文を読みます。

 

「周辺の環境」、「構造をどう解いたか」、「設計者の狙い」など

最初に分析した時に自分が気になっていた点の、

答え合わせをすることが出来ました。

 

特に気になった点は、

ノートに整理しメモを残します。

 

 

今回は特に、以下の2つの事が印象的でした。

・「スロープ状(と言っても人が登るためではなさそう?)の床が、

そのままブレースの代わりとして応用していた点」

・「これだけの植物に水を与えるために、

屋根で集めた雨水を自動で活用出来るようにしていた点」

 

どちらも面白いアイデアで問題を解決していて、

自分が同じような問題に直面した場合は、

1つの解法としてヒントになりそうですね。

 

 

模写してみる

最後に、実際に手を動かして模写をしてみます。

 

ここまででも大まかな分析をすることは出来ますが、

模写をすることには、

  1. 分析時の解像度を上げることが出来る。
  2. 普段自分の設計やパースを描くとき
  3. 正確な視覚イメージが記憶に残りやすい。

という2つの大きなメリットがあります。

 

 

また、模写の意義についてはこちらの記事でもまとめています。

「ただ見るだけ、あるいはトレースじゃダメなの?」

と気になっている方はこちらも一緒にどうぞ!

 

 


どこから模写してもOKですが、

まずはパッと見で気になる部分から描いてみました。

 

また、「図面や写真のうちどれを模写すべきか」については、

一番気になるものを選びましょう。

 

1つの建築につき1~3枚模写する事が多いですが、

徹底的に色んな角度から分析することも重要なので、

「これは!」と思った建築物には取り組んで見ましょう。

 

僕は今回、

「植物による視線の遮りと抜け」、「プライバシーを考慮したと思われるガラスの反射が強さ」、

「複雑な立体構成」を分析してみたいと思い、それを分析できそうな写真を選びました。

 

最初にまずは、

細長い柱、天井部分のデッキプレート、雨どいから伝ってくる鎖

が気になったので描いてみました。

 

この時、

気になった点や、他の図面から調べた情報を

違う色のペンで書きこんでいきます。

 

これにより、模写しながら考えた事、調べた事が1枚に描かれるため、

ただ機械的に形を書き写すような模写ではなく、

「理解しながら」「考えながら」模写をするように意識しやすくなります。

 

 

このように

「これはなぜこうなっているんだろう?」

と考えながら模写をすることが非常に重要です。

 

そのためには、とにかく手を動かすというよりも、

 

「それぞれの位置関係を考えてみる」

「素材や全体の構成や寸法から感じる印象に目を向けてみる」

「書いてある構造材や仕上げ材について検索してみる」

「類似した機能や形を持つ建築物と比較して調べてみる」

など、

一度立ち止まって俯瞰したり、違う視点から考えてみたりする事が重要ですね。

 

 

 

 

ここまでの事を意識しながら、一通り模写してみました。

 

実際に模写を通して細かく分析していくことで、

「植栽の配置が、視線の抜けと遮りを絶妙にコントロールしている点」、

「視線と動線のシーケンスが、周辺と内部を程よくつないでいる点」、

「ただ単純に植栽とガラスの反射でプライバシーを守るために視線を遮るのではなく、

内部の様子を見ることは出来ないけど存在を感じる程度には見えるようになっている点」、

「デッキプレートによる光の反射や周辺の映り込みを利用している可能性」など、

高い解像度で分析することが出来ました。

 

 

まとめ

今回は「新建築データ」のサイトから

「Overlap House」という住宅を模写しました。

 

また、雑誌での模写に慣れてきたら、

 

実際に訪れた建築物であったり、

ふと気になった建築物を自由に模写しても、

多くのことが学べるようになります。

 

その時はぜひいろんな建築物を自由に模写してみて下さい!

 

ここまで読んでくださって有難うございました!

ぜひ、自分でも実際に気になる建築物を選び、模写してみて下さい!

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